オープン以来、出張中を除いて、数年間ほぼ毎日通っていたバーへぱったりと行かなくなりました。ボトルを買って自宅に置くほどではないけれど、たまに飲みたくなるような酒も揃っていて、モダンジャズが流れる静かな店でした。しかし、最近は酒の種類が減るだけでなく、バーにあって当然という銘柄も切らせたままです。その一方で、酒のアテではない食事を出すようになって禁煙の時間帯が出現、ロックやポップスをかける日も増えて来ました。 すでにオープン当初からの常連客は小生だけになっていたのですが、ジャズが流れるなか一人、酒を味わい、煙草を燻らすといった趣味人は、もはや来ません。客層は完全に入れ替わり、複数人で来店し、まるで居酒屋のようなノリでワイワイガヤガヤ、酔っぱらって大騒ぎするのが目的で、酒や音楽などはどうでも良いような人たちです。となると、前者のような人種は、初回なら二度と来ないでしょうし、常連になっていたとしても足が遠退いて当然です。 小生が働く民放局の客は一定の嗜好を持ったグループや層ではない老若男女の視聴者で、広く一般受けするものを作るため日々悩まされています。しかし、このバーは人通りが少ない路地にある小さな店なので、通りすがりの一見客ではなく、固定客を増やすのが妥当。また、席数わずか10ほどなので、所謂スケールメリットは出しようもありません。加えて、酒と違って料理はロスが出易いので、経営的に如何なものかと案じるのです。 店舗で万人受けを狙った競争しようとすると、それなりの立地や規模が必要です。ならば、フランチャイズやチェーン店ではないのですから、オープン当時の“山椒は小粒でピリリと辛い”といった売り方を続ければ良い筈です。しかし、今や目立たず狭いという以外は、ありきたりのパブに変身しています。オーナーでも出資者でもない一人の客には如何ともし難く、唯々去るのみ。ということで、小生にとって、オフの時間の居場所もなくなってしまったというわけです。(しんぼー)
|