自主取材で行っていたタイ・ミャンマー国境で携帯が鳴り、何でも小生が勤務先で作ったドキュメンタリー番組に「幼児ポルノ」のようなカットがあると放送前のチェックで問題になっているとのこと。熱帯の少数民族を取り上げたもので、確かに海辺で裸の子供が遊んではいますが、ミニスカにハイヒール姿で頷くだけの女子アナをチラチラ映すような狙いはありません。多様な変態に逐一配慮していては、今に犬や豚にも服を着せないと映せなくなるだろうと呆れましたが、会社に著作権がある仕事なので「そういうことなら、どうぞ差し替えて」と大人しく折れておきました。 そんな異次元とやり取りしながらの自主取材から戻って1週間が経ちましたが、記事にする時間がありません。帰国直後から忙殺されている仕事が、また異次元といった内容なので頭の切り替えが利かず、1、2時間なら捻出できても、どうも仕事が手に着かないという感じなのです。まだメディアには出ていない内容なので気は急くのですが、一方で小生の記事など誰も待っていないことも分かっています。知りたい人が多いならば、マスコミが記事や映像を買ったり、人を出してでも報じるからです。 マスコミに出る記事やリポートは分かり易さが第一なので、指の間から零れる小さな事実は省略して大掴みし、記号のように単純化しています。だから、売れる“商品”になるのです。小さな事実の中には正反対の意見が混在し、或いは、二極論では整理できない要素も往々にしてあります。なので、単純化は短絡から誤解を招くのですが、如何せん、複雑なことはご免とばかり、短絡こそが求められているようです。 売れない自主取材ですが、単純化を強いられないだけでなく、言葉狩りならぬ“映像狩り”にも遭わず、かといって、内容に関係のない女性リポーターや女優、タレントらを取って付ける演出も不要です。(しんぼー)
|