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しんぼー/Shinboh

Author:しんぼー/Shinboh
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ルポ集『東南アジアの人々』
"People in Southeast Asia"

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フォトジャーナリストの戯言
取材に基づく記事やビデオリポートではなく、日々の戯言
ストライキ?!宅配便で
 仕分け作業について1時間ほどが経った時、集荷トラックはどんどん到着しているにも関わらず、なぜかベルトコンベアの荷物がピタッと途絶えました。手持ち無沙汰にしていると、40代半ばのリーダーが「この時間帯、運転手たちが荷下ろしを止めているんだよ、残業代が払われないから」。ストライキ?労働組合の活動ならば、今どき珍しくありませんか。「この後一気に流れてくるから、忙しくなるよ」。彼は賃金闘争などに興味はなく、とにかくそのシワ寄せが回ってくることを嫌がっているようです。それにしても、労組ならば「残業代払え!スト決行中」といった立て看板やビラなどを用意して社外の人にもアピールし、外圧も利用するのが常道ですが、ただ荷物が止まっただけで、彼の説明がない限りなにも分かりません。ネット通販の激増に伴って、宅配便業者は深刻な人手不足という新聞記事を何度か読み、今回はその実態を見に行ってきました。 
 派遣労働者が交代を待つプラスチック製のベンチが並ぶ一室。そこに置かれたテレビでは、仕事の流れや注意点などを説明するビデオがループ再生されています。小生は初体験の職場なので一言一句聞き逃さないよう食い入るように見ていましたが、いざ仕事が始まるとビデオと実際のギャップの大きさに戸惑うばかりです。ボックスカートは両手で後ろから押すようにと指導していますが、次々と荷物が押し寄せる現場では2台のカートを両手で引いて移動させなくては間に合いません。また、手甲やアキレスガード(脚絆)を着けるよう促していますが、派遣に用意されているのはヘルメットと安全靴だけ。ケガには至りませんでしたが、小生は荷下ろししていたカートと動いてきたカートの間に手を挟まれました。ダイレクトメールといった軽い荷物も沢山ありますが、そうした軽いものは一つの箱に100通、200通とまとめて入れてあるので、結局どの荷物も重いことに変わりありません。問題は重量よりも、速さです。仕分け1個にかける時間は4秒とか。荷物の正面や真上まで足を運んで、腰を入れて持ち上げていては、流れについて行けません。どうしても斜めに腕を延ばして荷物を持ち上げることになるので、腰や腕が痛くなります。
 ビデオで目に止まったのは外国語の字幕です。タイムカードの氏名欄を見たり、周囲のざわめきに聞き耳を立てたりすると、先日の食品工場ほどは多くなさそうですが、やはり外国人労働者に相当頼っている様子です。そして、その字幕は英語ではなく、ここでもベトナム語。ベトナムの一人当たりのGDPは約2、300ドルとタイの半分以下ですが、人口はタイの1.5倍の9千200万超え。識字率は95%と高く、勤労な国民性、飛行機の直行便が増えたことなども鑑みると不思議ではありません。単純作業と力仕事、夜勤、ケガをする危険など、そして何よりも正社員採用の可能性や昇進昇給がない職場では、日本人や日本に定住している外国人は労働意欲を削がれて自然です。若いころの短期間、或いは、年に何度かならば耐えられる人は多くいるでしょう。人手不足になるのは、それが息つく暇もなく、来る日も来る日も止め処なく続くからだと思います。宅配便の需要が拡大するなか、この業者だけですでに20万人以上が働いていますが、さらに1万人近く補充するとのこと。Waiting for the last train一部地域では試験的に週休3日制を唱って募集しているそうです。また、短期派遣の求人も連日ネットに上がっていて、人数が揃わない日には「急募」と見出しが立ち、普段は付かない交通費や時給の上積みが見られるといった具合で、労働力の確保が難しさを増しているようです。
 約1時間ずつ、ラベルにあるバーコード登録をはじめ、親番(地方)と子番(都道府県)の仕分けの他、ボックスの移動や積み込み、積み下ろしも、小生は一通りやりました。初めてだったので、どのセクションも手伝えるようにするための教育システムかと察します。終電に間に合う時刻で交代する小生に、前出のリーダーが笑顔で「また来てよ。よろしく」と。しかし、この日の午前中、これまでの経験を活かせる仕事が年内に入る連絡があったのです。適職が見つかるまでの空き時間を無駄にしないために始めた日雇い派遣の体験取材でしたが、これにて打ち止め。もっと見たいという好奇心と、もう懲り懲りという疲労感を交錯させながら、翌朝まで働く人たちが降りたバスに乗り込みました。(しんぼー)

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体験、コンビニ弁当工場
 「交代がいなくて、トイレにさえ行けないんですよ」。非正規雇用の取材で、フリーターユニオンの組合員が泣きそうな顔で話してくれたことがありました。ベルトコンベアで次々と流れてくる弁当トレイにご飯やおかず、透明シートなど、それぞれが担当するモノを盛りつけていくという作業。そんな弁当価格競争の現場を自ら体験してきました。
 その日は日曜日でしたが、最寄り駅から工場へ向かうマイクロバスは満席。運転席のラジオから朝のニュースがかすかに聞こえてくるだけで、口を開く人は誰一人いません。何でも日本語検定の試験日で、外国人の工員がごっそり休んだ穴を派遣労働者で埋めるとのこと。場内の掲示物全てがベトナム語との併記になっています。少数の中国人とフィリピン人を除いて、工員の7、8割がベトナム人だからです。各セクションのリーダーも、日本語がある程度できるようになったベトナム人が担っています。厚労省によると、外国人労働者数は去年108万人と過去最高を更新し、中国人に次いでベトナム人が多いのですが、伸び率はベトナム人が1位。日本人はといえば、事務所内と工場では監督、そして、外国人労働者の不足を補填する派遣といった具合です。この企業のホームページには高卒で19万、大卒で22万円が初任給と。社員は営業や管理、商品開発などに当たり、工場での単純労働は最初の研修時だけのようです。工場の現業職でもベトナム人は日本へ出稼ぎに来ることで5倍ほどの収入になりますが、自宅も家族も日本にという日本人にとっても時給は1,000円ポッキリ。手練れの日本人女性が新入りの派遣を罵倒しています。1分もかからない作業手順の説明を怠っているからなのですが、きっとこの人はかつかつの生活で、人生おもしろくないことばかりなのだろうなと想像してしまいます。
 始業は午前9時。小生の場合、最初の1時間は天板に食材を並べ、タレを塗って、オーブンに入れる作業。その後2時間半は、オーブンから出てきた天板を食洗機にかけ、タレと油のこびりつきを手洗いで落とします。場内の移動に時間がかかり正味45分になった昼食休憩後は、話に聞いていた弁当ラインに6時までつきました。幸い便意はもよおしませんでしたが、空になったバットを取り替えたり、規定通りにとやり直したりすると、その間にもベルトコンベアは容赦なく流れて行ってしまい、パニックに陥ります。若い頃、炎天下の甲子園球場で高校野球を1日4試合取材した日々を結構ハードだったと記憶していますが、今回はそれ以上に過酷な仕事でした。野球は点差が開けば逆転のチャンスが来るまで、ちょっと気を抜いていても問題ありません。1点を争う緊迫した試合でも、イニングの合間には隣の仕事仲間と雑談くらいし、一試合終われば一服もできたものでした。また、選手の特徴やチームの戦績を頭に入れておけば、集中力や体力の配分もできました。しかし、機械に合わせなければならない食品工場は、そうした要領が一切使えず、正にロボットになった気分です。On my way back
 送迎バスを降り、駅までの高架下を歩きながら、あれこれ思いました(写真)。「労働者の健康と志気、製品の品質管理のためにも90分毎くらいに小休止を入れるべきだ。ラインを止めたり、交代を用意したりすると競争に負け、受注できなくなるのかな?あれだけ多くのベトナム人が単純労働しているけど、週28時間以内か日本人と結婚した人たちなのだろうか?そもそも二国間の経済格差を利用しての労働力調達も、本人たちの自由意志とはいえ、不条理を感じる。さっき作った弁当は今日の日当で20食も買えるじゃないか。そこまでダンピングしなくてはならない?たとえ弁当が100円高くなっても、栄養失調や餓死者は出ず、不買運動も起こらないだろうに。……。……」。ことほどさように非正規雇用の厳しい現場をヘロヘロになりながら感じた体験でした。(しんぼー)

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