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ルポ集『東南アジアの人びと』
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フォトジャーナリストの戯言
取材に基づく記事やビデオリポートではなく、日々の戯言
フライング営業のスナックで
 ライフワークは東南アジアですが、現地へ取材に行けるのは早くて7月以降と見えて来ました。ということで、それまでは新型コロナ関連で国内取材を続けます。身の回りにマスコミが取り上げないけれど、看過できないことがあれば、是非ご一報ください。どうぞ宜しくご理解ご協力の程お願い申し上げます。
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びくびくしながらフライング営業するスナック 「もうあんまり人生に未練ないのよ、私。いつ死んでもいいかなって」。「いやいや、まだ千万馬券あてないと」。幸子(仮名)ママと常連客の昨夜のやりとりだ。
 東京都や大阪府などを除く39県で緊急事態宣言の解除が決まった5月14日の午後8時半、まだ解除されていない県で営業を再開していたスナックがあった。新型コロナのウィルス感染でハイリスクな三密の極みとされているのがスナック。カウンターに鈴なりになってマスクを外して酒を飲み、談笑にカラオケとなれば、互いに飛沫感染は避けられまい。まだ営業も外出も自粛要請が解除されていないので、フライング営業である。
 50代後半の幸子さんは雇われママ。空家賃と使わないカラオケの配信料を払っていた経営者から「そろそろ店を開けようと思うけど、嫌でなかったら、どう?」と11日に連絡が入ったそうだ。昼間はスーパーのパートに行っているママは、子どもは既に独立して一人暮らし。「私、美味しいものとかお酒、大好きなんだけど、昼だけだと家賃と携帯代で消えちゃって…」。経営者は休業補償してくれず、持続化給付金の申請要件は満たせず、びくびくしながらも店を開けることを選んだ。『自粛警察』という新語をよく目にするようになった。個々の事情などは考慮せず、自粛していない人への攻撃が横行するなか、ママはフライングするか否かの判断を委ねられ、矢面に立たされている。
 今の経営者で4代目というこの店は、私鉄の駅前で半世紀以上続いてきた。紛れもなくスナックの草分けと言える。なぜなら、スナックという業態は東京オリンピックが開かれた1964年頃に生まれたから。当時、風俗浄化という観点から酒類提供店の深夜営業への規制が厳しくなった。そこで、酒も出すが「スナック=軽食」の店という口実で規制を逃れるために現れたとのこと。だが、今回は人命が係っているだけに、そんな抜け道もなさそうだ。
 それでも特定警戒県以外では入り口に消毒用アルコールを置きながら営業を続けていたバーもあった。「平熱より高い方と3人以上のグループはお断りします。入店前に必ず手指の消毒をお願いします。間隔を空けている椅子の移動は禁止です。互いに1m以内に近寄らないでください。当面、使い捨ての紙おしぼりを使います」。アルコールの瓶の上に貼られていた遵守事項である。
 全国でコンビニより多く約10万店あるといわれるスナックは、新型コロナの影響で経営が立ち行かなくなり廃業が続出。加えて、緊急事態宣言の解除後も飲食店は総じて対面で座ることや人と人が近づくことを避けるよう求められるのが自明なので、客足が戻るかも不透明だ。日本の飲み文化が変わるかも知れない。
 幸子ママも店を再開するにあたって、毎日検温し、マスクを着け、入り口にアルコールを置いている。知人の居酒屋では看板を蹴破られたと聞き、看板には灯を入れず、カラオケも低音量でマイクなし。競馬の話をしていた常連客は洋食店のシェフ。「今日の客はひとりっ!」と自嘲する。この日こっそり訪れた客は小生を入れて4人、三密には程遠い寂しさだった。
 「また来てね」という幸子ママ。フライング営業しているのを知られると嫌がらせがあるかもと、見送りは断った。店の外は真っ暗。オープン当時からの型板ガラス越しにオレンジ色の光が仄かに漏れていた。(しんぼー)
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テーマ:働き方 - ジャンル:就職・お仕事

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